校長あいさつ

年度当初に際して

-困難な状況下で本年度の教育活動を始めるにあたって-

 

 本年度、本校校長を務めます、齋藤幸之介でございます。1年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。

年度当初に、御挨拶を申し上げます。

御子様の御入学・御進級、誠におめでとうございます。本校教職員は御子様をお預かりし、一人一人が確実に歩めるように、様々な工夫をすべく努力してまいります。

  さて、昨年度末には、すでに御案内のように、新型コロナウィルス蔓延を防ぐべく様々な手立てが講じられる中本校も臨時休校となり、子供たちは16日間登校することができませんでした。「学校に来たかった」「みんなと生活をしたかった」という子供たちの声を聞き、改めて申し訳なかったと思うと同時に、わずかな機会ではありましたが、今は耐え忍ぶとき、と話をしました。

 まだまだ厳しい状況は続くでしょう。また、東京2020オリンピック・パラリンピックが延期になるなど、大きな影響も出ております。子供たちだけでなく、私たちも適切な対応の難しさを感じています。

 

「変わること」と「その中で忘れてはならない今までの積み重ね」

 さて、今年度は「大きな変革の時期」とも言えます。私共が教育活動を行う上で根拠とする学習指導要領が変わり、移行期間を経て本年度より完全実施となります。

 今回は、よりよい社会を創るための学校教育のあり方が求められています。今までも同様に言われてきましたが、例えば昨年度本校が研究発表を行った「ICT教育の推進、特にタブレット端末の活用」は、大きくそして速く変化し続ける世の中に対応するための教育のあり様を模索した成果であると言えます。

 すでに御案内の通り、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の三つをもって「生きる力」とし、この育成を果たすべく学校での教育活動は行われます。特に、学校での1日の時間の約7割を占める教科等の学習においては、

 

ア「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)

イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」

ウ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」

 

三つの資質・能力を育成することが求められています。そのためには、

 

・学ぶことに興味や関心をもったり、見通しをもって粘り強く取り組んだりする「主体的な学び」

・子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先達の考え方に触れることといった「対話的な学び」

・学習を通して得た知識を相互に結び付けて一層深く理解したり、情報を基に自分なりの考えを形成したりする「深い学び」

 

を視点として授業の改善を図るようにと示されています。

しかし、私はここで一つ確認をしておきたいことがあります。それは、今回学習指導要領が改訂されましたが、これは今までの教育活動が否定されたわけではない、ということです。学習指導要領を具体的に説明した「解説」の中には、
 

「長年にわたり積み重ねられた教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら」

「授業改善の取組は、既に小・中学校を中心に多くの実践が積み重ねられており、特に義務教育段階は、これまで地道に取り組まれ蓄積されてきた実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉える必要はないこと」

 

と示されています。

幸い、本校には、多くの先達が苦労されて積み重ねられた実践があります。また、今本校の教育活動に携わっている教職員も多くの実践を積み上げ、成果を上げています。ですから、単に新しい考え方に惑わされるのではなく、今までの成果を私共の「よさ」「強み」と捉え、さらに謙虚さを忘れずに絶えず改善を図ろうと努力してまいります。

 

FestinaLente」-変わるときだからこそ、大切にしたいこと

もう一つ大切にしたいことがあります。「Festina Lente」という言葉です。ラテン語だそうです。私はこの言葉を、芝消防署の入り口で見付けました。「ゆっくり、いそげ」という、相反する意味を並べながら、焦らずに確実に消火活動を進めることがつまり迅速に対応できることにつながる、ということです。実は、この言葉を、第27・28代校長 榮健先生も御在職中にお使いになられていました。本校の教育には、ともすると焦りそうになる姿に注意を払いながら、確実に、そしてスピード感も持ちながら取り組んできたという特色があります。

このことについては、私はすでに何度か触れてきていますが、今改めて大切にしたいと確認をしているところです。

学習指導要領が変わり、学校も変化を求められる、しかし、焦っても成果は出ない、だから確実に進めていこう。

未曾有の事態が起こった、対応が遅れるわけにはいかない、しかし、だからといって一部の情報や胆略的な判断はできない、よってときに冷静になり、そして必要な時間は保障して対処していこう。

本校の先達は、ひょっとすると私共にこう語りかけてくださっているのかもしれません。

 

だから、これから

 先程も申し述べたように、この困難な状況を解決し、乗り越えるのが容易ではないことは私が言うまでもありません。しかし、この状況を冷静に分析して適切に情報を得るとともに、対応策を多くから学び、自らもこれを解決する一人と自覚をして積極的に働きかけようとする姿は、まさしくこれからの社会に生きる力を獲得することにもつながります。

 今を耐え忍びながら頑張っている子供たちと共に歩もう、と私共は今改めて強くそう思っています。

皆様には御負担や御迷惑をおかけすることと存じますが、御理解と御協力を賜れれば幸いです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

令和2年4月1日

港区立芝小学校長

齋藤幸之介